天童荒太:家族狩り2006年06月02日 22:36

 天童荒太氏の作品の中では、永遠の仔を先に読んでいるので、氏の作品としては2番目に読んだ作品である。一言で言うと重い・苦しい作品であった。一般に小説の登場人物は、平均的な人から少しずれた人が中心になる。それがヒーローであったり、殺人者であったりする。この小説は、”家族の愛”がテーマなのかもしれないが、決して平穏な、幸せな家族のストーリーではない。
 小説としては長く、出だしはなかなか進まなかったが、途中からは一気に読み進んだ。永遠の仔と同様に(というよりこちらが先なのだが)、複数の場面での登場人物が、それぞれ過去に背負っているものを少しづつ出しながら、ストーリーを巧妙につなげてゆく。
 この小説には、ヒーローは存在しない。皆重く、苦しい問題だけを抱えているように見える。事件は解決した後も、それぞれ過去をひきづっての生活がつづく。その先に幸せな生活があるのかどうか分からないが、わずかな救いは、亜衣や遊子、巣藤、馬見原がそれぞれ今でと少し違った道を歩き始めたことであろうか?それとて、決して平坦な道ではなく、彼ら、彼女らの人生は、もう少し平穏なものに変わって行くのだろうか?

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