乃南アサ:晩鐘2006年05月27日 09:26

 昨日読み終えました乃南アサさんの作品の感想です。乃南さんの作品も、「凍える牙」から読み始め、何作か読んでいます。「凍える牙」にも出てきた音道刑事のファンです。このシリーズに関しては、また別の機会に書きたいと思います。
 この「晩鐘」というのは、その前作「風紋」の続きのようになっているのですが、私は知らずに購入してしまい読みつづけていました。上下2巻のかなりのボリュームがあります。
 テーマは、まったく別に生活する、殺人犯の家族と、被害者の家族をそれぞれの視点から捉え、またそこに両者を知る新聞記者を介在させることにより微妙な接点を持たせている。被害者の娘、高浜真裕子の心情が、重く痛々しいものから、新聞記者建部との出会いによって変わってくるところが良く描かれています。このあたりで、逆に高浜真裕子は、犯罪が起こる前の「風紋」ではどういう性格に描かれているのか興味をもちました。今度はさかのぼって「風紋」を読んでみようと思います。犯罪にいろいろな形で巻き込まれた人々の本当の心情は分かりませんが、「家族」というだけで人生が変わってしまったような人たちが居ることを考えさせられます。
 個人的には最後の最後のほうで、新聞記者建部の母親が言う一言
「あんたみたいな、どっかはっきりしない子はね、なんでもかんでもいいよ、いいよって相手を甘やかすの。そういうのは結局相手のためにならないのよ。特に世間知らずの中途半端な子供だったらあっという間にわがままになるだけだわよ」
が実は印象的。これって、子供に対する話ではなくて、結婚相手との関係について言っていることなんですよね。